旭山ブログ
認知症になっても持っている力
認知症は忘れてしまう病気、できていたことが上手くできなくなってしまう病気と思ってしまう方が多いのではないでしょうか。その場面を目にしてしまいショックを受けたご家族の方も中にはいらっしゃるかもしれません。ご本人様も、実際できない事を実感した時大きな悲しみや不安感に包まれている状況です。
しかし、生活の中で手助けが必要になる部分はありますが、全てが一度に失われてしまうわけではなく、以前から覚えていた知識、印象深かった記憶・感情はご本人様の中に大切に残っています。仕事・家事・趣味活動のような、ずっと続けていた事、楽しんでやってきたことは身体が自然に動くほどしみついているのです。
以前と違う点としては、実際に取り組む時に持っている力を発揮できるよう環境作りなどの工夫をする必要があるという事です。その工夫1つで、活動ができた時にご本人様にとって、それが喜びとなり自信に繋がっていきます。日々の生活にもメリハリがうまれてくることでしょう。
当院の作業療法では、患者様の生活に着目し得意なこと、好きなことを引き出し機能面や感情面に働きかけています。
集団での活動を中心に、体操や歌・創作活動・小集団での他者交流も目的とした活動など内容は様々です。
自信を失いかけている方でも、みんなでやることでハードルが下がりやってみようかという気持ちになる事、昔にやったことのある馴染みのある活動を提供することで「知っている」と思える事、人といることが好きで、それに付随して自然と取り組めること、集団で行う良さがあります。
また、はじめから集団活動に参加することが難しくとも、個別での関わりも実施しており、お話しを聞き、患者様に合わせた環境下で導入できることを段階づけて行っています。
そして内容も大切ですが、毎日参加することで日課となり生活のリズムになる事も今後の人生を歩む上で重要となります。予定があることは生活にも彩りを添えてくれることと思います。
ご本人の「できた」「できる」が自信に繋がり機能が維持されること、そして生活の中に「嬉しい」「楽しい」という感情が増えていくことが日々大切にしていることです。
認知症治療病棟での看護ケアのご紹介!
初めまして、こんにちは!
私は認知症治療病棟に勤務して5年が経とうとしている看護師です。
認知症治療病棟についての問い合わせがたくさん届いているとの情報を聞きつけたので、今日は私たち看護職員のケアについて紹介したいと思います。
ご存じかと思いますが、認知症は何らかの要因により、脳の神経細胞が障害されることによって、正常に発達した認知機能が障害を受ける病気で、徐々に進行し最終的に死に至ります。
入院治療に来られた患者様は、この病気によってとても不安と恐怖の中におられます。人間にとって不安と恐怖は不快な状態であると本能で感じていて些細なことで不快感は増していくのです。
そのような患者様の体験を私たちは理解して、少しでも心地よい状態(安全で安心)でいられるように対応する技術=カンフォータブル・ケアを行っています。
また、患者様は今までできていたことが徐々にできなくなっていきます。
しかし、心地よい状態の時には認知機能や身体機能は活性化されることがあります。私たちはカンフォータブル・ケア技術を駆使しながら、日常生活の中で患者様の持っている力を発揮できるように関わるアクティビティ・ケアも行っています。
例えば食事をとりたがらなかった患者様に対して、笑顔でコミュニケーションをとる、関心を寄せて関わる、五感を通じて心地よさを感じていただけるように、整容や手浴、足浴などを行い続けました。
また、嗜好の聞き取りをご家族に行い、好きなものを差し入れしていただき提供すると、介助を受け食事をとれるようになったのです。
その後、自らスプーンをもって食事をとるようになりました。自分で食べたいものを食べたいタイミングで食べたいだけ食べられるなんて素敵!!とみんなで喜びました。患者様にも笑顔が見られました。
こんな風にケア技術を使いながら症状を緩和し、患者様らしさが発揮できるようにケアをしています。ほんの一部の紹介ではありましたが、入院治療でのケアの様子の参考になればと思います。
認知症の方の困りごととその対処法
認知症は、記憶力や判断力、思考力が低下し、日常生活に支障をきたす病気です。その影響はご本人だけではなく、周囲のご家族等にも大きな負担を強いることがあります。
認知症が進行するにつれて様々な困りごとが現れますが、これら困りごとにどのように対処していくかが、ご本人やご家族等の生活の質の向上において非常に重要となります。
本記事では、認知症の方が直面する具体的な困りごとと、それに対する対処法の一例についてご紹介いたします。
1.認知症の進行と困りごとの種類
認知症は進行性の疾患であるため、初期症状と進行した症状では困りごとに大きな違いがあります。
初期段階では、記憶障害が最も顕著に現れますが、比較的軽度なため、ご本人や周囲もその症状に気づきにくいことが多いです。この段階では、物忘れの増加(約束や予定を忘れる、物を置いた場所を忘れる)、注意力の散漫(一度に複数のことをこなすことが難しくなる、集中力が欠ける)、判断力の低下(選択肢が複数あるとどれにするか迷い決められない、家事をする際にミスが増加する)が見られるようになります。
初期段階では、困りごとが日常生活にそれほど支障をきたすほどではありませんが、周囲の方によるサポートを始めることが大切です。
認知症が進行すると中期段階に入り、ご本人がより具体的な困りごとを感じ始めることが多くなります。この段階では、日常生活の困難性(食事や着替えなどの基本的な日常生活動作が自力でできなくなり、介護が必要になる)、認識の混乱(時間や場所、人の認識が曖昧になり、過去の出来事や人物を混同することが増加する)、感情の不安定(不安や怒り、恐怖感などが強くなり、精神的な不安定さが現れることがある)が顕著にみられるようになります。
中期段階では、認知症の方が自分でできることが少なくなり、周囲のサポートが重要になってきます。
さらに認知症が進行し後期段階に入ると、身体的な障害(歩行や立ち上がりが困難になり、寝たきりになることもある)、コミュニケーションの障害(言葉をうまく扱えなくなり、考えを伝えるのが難しくなることがある)、行動の変化(暴力的な言動をとる、徘徊などの行動が見られることがある)がみられるようになります。
後期段階では、家族等の負担が非常に大きくなり、24時間体制でのサポートが必要になることが多いです。適切な介護サービス利用はもちろんですが、施設への入所を検討することもあります。
2.認知症の方の困りごとの具体例と対処法の一例
認知症の方が直面する困りごとは非常に多岐にわたります。以下では、具体的な困りごととその対処法の一例をご紹介します。
1)物忘れと混乱
認知症の方に最も多く見られる困りごとは、物忘れです。物の置き忘れや、人の名前や顔を思い出せないことが増えます。
日常的な用事や予定をメモやカレンダーに書いておくことで、物忘れを減らすことができます。また、物の定位置を決めて、毎回同じ場所に戻すことで物の置き忘れを減らすことができます。
さらに、時間や場所を認識することも難しくなります。このような場合、混乱や不安をともない、日常生活を送る上で大きな障害となります。
家の中を整理し、シンプルでわかりやすい環境にすることで、混乱を防ぐことができます。また、不安を感じているときは、穏やかな言葉を用い落ち着かせ、安心させることが大切です。
2)コミュニケーションエラー
認知症が進行すると、言葉が出にくくなることや、会話が途切れ途切れになることがあります。コミュニケーションがうまく取れなくなると、ご本人もフラストレーションを感じることがあります。
難しい言葉や長い説明を避け、簡潔な言葉で伝えるように心がけ、言葉だけではなく、絵や写真を使って視覚的に伝えると、理解しやすくなります。
3)徘徊や暴力的な言動
認知症の方の中には、家の中を歩き回ることや、家を出て行ってしまうことがあります。
ドアに鍵をかけることや、家の中の障害物をなくして歩きやすくすることで、対処していきます。また、外に出る際には必ず付き添うようにし、外出先で迷子にならないようにサポートします。徘徊が激しくなると、自宅生活が困難になることもあるため、その際にはご本人にあった適切な施設への入所も検討することがあります。
また徘徊だけではなく、暴力的な言動が頻回にある場合は医療機関で治療をすることも選択肢の一つとしてあります。
認知症の進行を止めることは困難ですが、暴力的な言動を穏やかにすることは可能な場合もあります。
3.まとめ
認知症の方が直面する困りごとは、進行具合や個人の状態により異なりますが、共通して言えることは、困りごとに対して早期に気づき、適切な対処法を講じることが大切だということです。
ご家族等は、認知症の症状や特性を理解し、どのようなサポートが必要かを学び、柔軟に対応していくことが求められます。ただし、家族等だけで抱え込まず、専門機関のサポートを受けることが非常に大切となります。
地域社会全体で認知症の方の困りごとに対して、理解と共感を持って接することが、最大のケアとなります。
認知症とは
はじめまして、旭山病院 精神科医師の姫野と申します。
当院は依存症治療拠点機関の病院として、日々多方面から依存症に関する相談をいただいています。実は、その次に多いのが、認知症に関する相談です。専門職のそれぞれの立場から、認知症をテーマとしたお話を提供できればと考えています。複数の回にわたりますが、よろしければお付き合いください。
皆さんは、「認知症」という言葉を聞いて、どんなイメージが浮かぶでしょうか。多くの方が連想するのは「日付の感覚が鈍る」「短い時間の記憶力が落ちる」「物忘れ増えていく」などではないでしょうか。
記憶とは、(1)情報を覚えこむこと(記銘)、(2)情報を保存しておくこと(保持)、(3)情報を思い出すこと(想起)の3つの過程により成立します。「もの忘れ」とは、いったん覚えた内容を思い出せないこと(想起,再生の障害)を意味します。もの忘れといっても、それが夕ごはんの内容を詳しく思い出せないものなら、加齢による記銘力低下として、我が身に思い当たる人は多いでしょう。しかし食事をしたこと自体を忘れるようなら病的と言えるかもしれません。
「もの忘れ」の症状が中心となる認知症があります。アルツハイマー型認知症です。
アルツハイマー型認知症は、大脳皮質の神経細胞内外に「アミロイド斑」や「タウたんぱくの蓄積」が生じることが病態の中核と考えられています。これらの変性が進むことで、脳の萎縮が徐々に進行し、記憶の障害や判断力の低下、見当識障害(時間や場所、人を正しく認識できなくなる症状)などが顕著になります。初期には、最近の出来事を思い出せない、同じことを何度も尋ねるといった「もの忘れ」が目立ちますが、進行するにつれ、会話や理解力の低下、実行機能障害(段取りや計画を立てる力が弱まる)などが目立ってきます。アルツハイマー型認知症は、高齢者人口の増加とともに増加の一途を辿っており、早期の診断と対応が社会的にも重要な課題となっています。
普段診療に携わっていると、一般の方が認知症としてイメージしている部分の多くは、このアルツハイマー型認知症からきていると感じます。確かにこの疾患は、認知症診断において、全体の6割以上を占めています。逆にいえば3割以上は、一般の方が「これは認知症とは関係ないだろう」と見逃されている・あるいは想定していない症状で別の認知症診断が下される、という事でもあります。
例えば、レビー小体型認知症。脳内に「レビー小体」と呼ばれるたんぱく質の沈着がみられることで、アルツハイマー型とは異なる臨床症状を呈します。「パーキンソン症状(手足のふるえや、動作の緩慢など」「幻視(はっきりとした人や動物などの幻覚)」「注意力や覚醒度の変動(認知機能の波)」などが代表的な症状です。「レビー小体」の沈着が、記憶力と関連のない脳の部位に多ければ、上記症状はみられるけれど、もの忘れは目立たないという場合があり、認知症と診断されて驚いた、という事もあります。脳梗塞や脳出血後に出現する事のある脳血管性認知症も、脳血管が損傷を受けた部位によって、もの忘れが目立つ場合と、そうでない場合があります。そのほか、性格や行動の変化が先に目立ってくる前頭側頭型認知症を合わせて、「4大認知症」と呼ばれる事があります。
適切な診断が下される事は重要です。同じく「認知症」の名前を冠していても、その種類によって適切なケアや、適応となる薬が異なるからです。さらに患者さん、またはご家族が(この症状は)認知症でしょうか」と受診される際、医師が注意している点として、「身体疾患やほかの精神疾患は隠れてないだろうか」と考えます。例えば甲状腺という内臓から分泌されるホルモンが低下する「甲状腺機能低下症」、加齢とともに罹患率が上昇する「特発性正常圧水頭症」や「てんかん」などは、部分的には、認知症とよく似た症状が出現する場合があります。また、高齢になってから出現する「うつ病」も、認知症との区別が難しい事が少なくありません。これらは適切な治療を受ける事により、一見もの忘れのようにみえる症状が改善する事が多いのです。
大切なのは、「ただのもの忘れではないかも?」と思った段階で早めに相談してみることです。本人も家族も、専門の医療機関や地域の支援機関に相談し、適切なサポートを受けることが大切です。認知症の理解を深め、温かい支援の輪を広げることで、誰もが安心して暮らせる社会を目指していけるよう、微力ながらお手伝いができればと考えています。
新年のご挨拶
新年あけましておめでとうございます。
2025年から当院のホームページではブログを開始したいと思います。
このブログを通して患者さんをはじめとした関係者の皆さまに、
旭山病院がどのような病院なのかをより知っていただいたり、当院からのお知らせを発信したいと思います。
またスタッフから皆さまへ心の問題についての専門的な知識や情報の提供の場ともしたいと思っています。
診療以外の旭山病院の取り組みなどもご紹介していきたいと考えています。
このブログで広く旭山病院を知っていただくとともに、
より良く・上手く病院を活用していただくための情報を皆さまに提供できれば幸いです。
本年もよろしくお願いいたします。
令和7年1月11日 旭山病院 院長 市来和政
ホームページリニューアル
旭山病院は1981年に開院し、40年以上の歴史のある病院です。また、同法人(医療法人北仁会)には、いしばし病院(小樽市)や幹メンタルクリニック(札幌市)、精神科訪問看護ステーション結(札幌市)があり、「精神医療を必要とする人が、より健康に人とつながり、社会に参加できるようになることを支援し、地域社会のメンタルヘルスの向上に貢献する」ための治療や支援を展開しています。
激動の現代社会では、ともすれば人々の「心の健康」が損なわれやすく、「生きづらさ」を抱える方も多くなっています。当院では、そのような方が「心の健康」を取り戻し、「その人らしい生き方」ができるようにお手伝いをさせていただきたいと考えています。
さて、この度、当院のホームページをリニューアルし、合わせて定期的に情報を発信していくこととなりました。
「精神科病院が提供する治療や支援または役割について」、「精神科医療や福祉に関する耳寄り情報」等々、皆様にとってお役立ちとなる情報を発信できればと考えています。
また、精神科病院や精神科医療に関する素朴な疑問等々にもお答えできる場になればとも考えています。
是非、今後発信される情報を楽しみにしていただけたらと思います!
今後とも、どうぞよろしくお願い致します。