精神科専攻医専門プログラム 2023
- 基幹病院:旭山病院
- 協力病院:道立緑ヶ丘病院、手稲渓仁会病院、大谷地病院、ミネルバ病院、三恵病院、幹メンタルクリニック
- プログラム名:精神科領域専門医研修プログラム
当院のプログラムについて
旭山病院は北海道札幌市の中央に位置する327床の精神科病院です。医療法人北仁会に属し、同法人は北海道でも最も歴史のある精神科の法人です。
研修基幹施設である当院は精神科医として必要な患者様の診療を豊富に経験することができる病院です。7名の指導医のもとで、精神病圏、気分障害圏、神経症圏、認知症、発達障害などの患者様の外来、入院治療を経験することができます。中でも依存症治療においては、当院は北海道及び札幌市からそれぞれ唯一の拠点医療機関に認定され、行政や他病院などと深い連携を結びながら活動を行っています。研修期間中には病期も広く経験する必要がありますが、急性期から慢性期まで幅広く診療が可能です。

精神科研修においては他診療科と比較しても多職種連携の理解が重要になってきますが、院内には豊富な多職種スタッフが存在し、強い絆で毎日患者様の診療に向き合っています。また院外各施設との連携も深く、研修医は実戦で診療におけるアライアンスの重要性について理解することが可能です。
協力病院もそれぞれが多彩な特色を備えた病院であり、精神科救急、リエゾン精神医学、児童思春期、地域精神科医療などが経験できます。
研修後半では研修医が一人で診療を行えるように、また研修期間内に各種学会への参加、及び一度の学会発表を指導の下で行えるようにします。
また精神科専門医に加えて精神保健指定医の資格も取得できるようにします。
当院について
当院は「働き方改革」が声高に議論されるよりも前から、医師自身の生活、いわゆるライフワークバランスを大切にしています。それぞれの医師が各々の考え方を持った上で、なおかつ協調して働くことができる職場作りを大切にしてきました。いわゆる「和気あいあい」とした雰囲気の中で毎日、各医師は診療に従事しています。また出身大学にも偏りはなく、病院長、医局長ともに北海道外の大学出身です。
当院の医師自身も研修医の先生をお迎えすることにより、より深く精神科医療に取り組めるように努力していく所存です。
病院見学などは随時可能です。
どうぞお気軽にご連絡いただければ幸いです。

住所:〒064-0946 北海道札幌市中央区双子山4-3-33
電話番号:011-641-7755
担当:事務長 佐久間 asahiyama-ikyoku@hokujin.or.jp
当院の研修プログラムは日本精神神経学会が推奨する下記のようなプログラムの趣旨にのっとって行っています。
具体的な詳細事項については各研修医と相談の上でプログラムをそれぞれ改変できるようにしている。
1.理念と使命
① 精神科領域専門医制度の理念
1 精神科領域専門医制度は、精神医学および精神医療の進歩に応じて、精神科医の知識・技能・態度を高め、優れた精神科領域専門医を育成し、生涯にわたる相互研鑽を測ることにより精神医療、精神保健の向上と社会福祉に貢献し、もって国民の信頼にこたえることを理念とする
② 精神科領域専門医の使命
2 患者の人権を尊重し、精神・身体・社会・倫理の各面を総合的に考慮して診断・治療する態度を涵養し、近接領域の診療科やメディカルスタッフと協力して、国民に良質で安全で安心できる精神医療を提供することを使命とする。
<研修カリキュラム>
2.専門研修の目標
① 精神科領域専門研修後の成果(Outcome)
3 以下の能力を備えた精神科領域専門医になる。 1)患者や家族の苦悩を受け止める感性と共感する能力を有し、その問題点と病態を把握し、治療を含めた対策を立てることができる。 2)患者・家族をはじめ多くの職種の人々とのコミュニケ-ション能力を有し専門性を発揮し協働することができる。 3)根拠に基づき、適切で、説明のできる医療を行うことができる。 4)臨床場面における困難に対し、自主的・積極的な態度で解決にあたり、患者から学ぶという謙虚な姿勢を備えている。 5)高い倫理性を備えている。
② 到達目標(修得すべき知識・技能・態度など)
ⅰ 専門知識
4 専攻医は精神科専攻医研修マニュアルにしたがって、研修期間中に以下の領域の専門知識を広く学ぶ必要がある。
1)患者及び家族との面接 / 2)疾患の概念と病態の理解 / 3)診断と治療計画 /
4)補助検査法 / 5)薬物・身体療法 / 6)精神療法 /
7)心理社会的療法、精神科リハビリテーション、及び地域精神医療・保健・福祉 /
8)精神科救急 / 9)リエゾン・コンサルテーション精神医学 /
10)法と精神医学(医療法、精神保健福祉法、成年後見制度等)/
11)医の倫理(人権の尊重とインフォームド・コンセント) / 12)安全管理・感染対策
ⅱ 専門技能(診察、検査、診断、処置、手術など)
5 専攻医は精神科専攻医研修マニュアルにしたがって、研修期間中に以下の通り専門技能を習得する。 1)患者及び家族との面接:面接によって情報を抽出し診断に結びつけるとともに、良好な治療関係を維持する。 2)診断と治療計画:精神・身体症状を的確に把握して診断・鑑別診断し、適切な治療を選択するとともに、経過に応じて診断と治療を見直す。 3)薬物療法:向精神薬の効果・副作用・薬理作用を習得し、患者に対する適切な選択、副作用の把握と予防及び効果判定ができる。 4)精神療法:患者の心理を把握するとともに、治療者と患者の間に起る心理的相互関係を理解し、適切な治療を行い、家族との協力関係を構築して家族の潜在能力を大事にできる。支持的精神療法を施行でき、認知行動療法や力動的精神療法を上級者の指導のもとに実践する。 5)補助検査法:病態や症状の把握及び評価のための各種検査を行うことができる。具体的にはCT、脳波の判読、各種心理テスト、症状評価表など 6)精神科救急:精神運動興奮状態、急性中毒、離脱症候群等への対応と治療ができる。 7)法と精神医学:精神保健福祉法全般を理解し、行動制限事項について把握できる。 8)リエゾン・コンサルテーション精神医学:他科の身体疾患をもつ患者の精神医学的診断・治療・ケアについて適切に対応できる。 9)心理社会的療法、精神科リハビリテーション、および地域精神医療:患者の機能の回復、自立促進、健康な地域生活維持のための種々の心理社会的療法やリハビリテーションを実践できる。 10)各種精神疾患について、必要に応じて研修指導医から助言を得ながら、主治医として診断・治療ができ、家族に説明することができる。
ⅲ 学問的姿勢
6 1)自己研修とその態度、2)精神医療の基礎となる制度、3)チーム医療、4)情報開示に耐える医療について生涯にわたって学習し、自己研鑽に努める姿勢を涵養する。そのことを通じて、科学的思考、課題解決型学習、生涯学習、研究などの技能と態度を身につけその成果を社会に向けて発信できる。
ⅳ 医師としての倫理性、社会性など
7 1)患者、家族のニーズを把握し、患者の人権に配慮した適切なインフォームドコンセントが行える。 2)病識のない患者に対して、人権を守る適切な倫理的、法律的対応ができる。 3)精神疾患に対するスティグマを払拭すべく社会的啓発活動を行う 4)多職種で構成されるチーム医療を実践し、チームの一員としてあるいはチームリーダ-として行動できる。 5)他科と連携を図り、他の医療従事者との適切な関係を構築できる。 6)医師としての責務を自立的に果たし信頼される。 7)診療記録の適切な記載ができる。 8)患者中心の医療を実践し、医の倫理・医療安全に貢献する。 9)臨床現場から学ぶ技能と態度を習得する。 10)学会活動・論文執筆を行い、医療の発展に寄与する。 11)後進の教育・指導を行う。 12)医療法規・制度を理解する。
③ 経験目標(種類、内容、経験数、要求レベル、学習法および評価法等)
ⅰ 経験すべき疾患・病態
8 経験すべき疾患および症例数は以下の通りである。
統合失調症(10例以上)、気分(感情)障害(5例以上)、神経症性障害、ストレス関連障害および身体表現性障害(摂食障害含む)(5例以上)、児童・思春期の精神障害(摂食障害を含む)(2例以上)、精神作用物質及び嗜癖行動による精神及び行動の障害(2例以上)、症状性を含む器質性精神障害(認知症など)(4例以上)、成人のパーソナリティ障害と行動の障害、広汎性発達障害、多動性障害(2例以上)、てんかん(1例以上)、睡眠障害(1例以上)
ⅱ 経験すべき診察・検査等
9 8に述べた領域の疾患について、精神科専攻医研修マニュアルを参照し、診察、検査を基準症例数以上経験し、関連する生化学、生理学、心理学、解剖学、遺伝学や画像診断についても学び、専門家として最低限の診療技術や知識を習得する。
ⅲ 経験すべき治療場面・診療形態等
10 薬物療法、精神療法、心理社会療法、身体療法等について学び、下記のそれぞれの治療場面、診療形態に応じて、最適な治療方法を選択する。
Ⅰ:経験すべき治療場面
1)精神科救急 / 2)行動制限 / 3)地域医療 / 4)合併症、コンサルテーション・リエゾン
Ⅱ:経験すべき診療形態
1)任意入院治療
2)非自発的入院治療(医療保護入院、措置入院や応急入院等については研修指導医の指導のもと、関係法規の運用を理解する)
3)外来
※精神科専攻医研修マニュアル参照
ⅳ 地域医療の経験(病診・病病連携、地域包括ケア、在宅医療など)
11 病診・病病連携、地域包括ケア、在宅医療、地域医療などでの医療システムや福祉システムを理解する。
具体的には、基礎疾患により通院困難な場合の往診医療、精神保健福祉センター及び保健所等関係機関との協働や連携パスなどを学び、経験する。
また、社会復帰関連施設、地域活動支援センター等の活動について実情とその役割について学び、経験する。
ⅴ 学術活動
12 1)日本精神神経学会学術総会に参加し、基本的な知識・技能を学ぶ 2)症例カンファレンスや勉強会に参加し、討論に参加する。 3)症例報告を中心にした臨床研究などを日本精神神経学会ないしは所定の関連学会で、第一演者として 1 回以上発表する。 4)論文発表ならびに臨床研究への参画等をすることが望ましい。
3.専門研修の方法
① 臨床現場での学習
13 臨床現場で以下のことを学習する 1) 入院・外来などの治療場面において診療の経験を積み、自律して診療に当たることができるようになる。 2) 自らの症例を提示して、カンファレンスなどを通して病態と診断過程を理解し、治療計画作成の理論を学ぶ。 3) 勉強会を通して、またインターネットにより情報検索の方法を会得する。 以上の学習を効果的に行うために月間スケジュール・週間スケジュールなどを作り、設備などの充実を図る。プログラムの例は別紙参照。
② 臨床現場を離れた学習
14 日本精神神経学会や関連学会の学術集会や各種研修会、セミナー等に参加して国内外の標準的治療、先進的治療、教育上重要な事項、医療安全、感染管理、医療倫理などについて学習する機会を持つ。
③ 自己学習(学習すべき内容を明確にし、学習方法を提示)
15 研修項目に示されている内容を日本精神神経学会やその関連学会等で作成している研修ガイドライン、e-learning、精神科専門医制度委員会が指定したDVD・ビデオなどを活用して、より広く、より深い知識や技能について研鑽する。
患者に向き合うことによって、精神科医としての態度や技能を自ら学習する姿勢を養い、生涯にわたって学習する習慣を身につける。
④ 専門研修中の年度毎の知識・技能・態度の修練プロセス
16 以下の到達目標に従って研修する。
到達目標
1年目:研修指導医と一緒に統合失調症、気分障害、器質性精神障害の患者等を受け持ち、良好な治療関係を築くための面接の仕方、診断と治療計画、薬物療法及び精神療法の基本を学び、リエゾン・コンサルテーション精神医学を経験する。とくに面接によって情報を抽出し診断に結びつけるとともに、良好な治療関係を構築し維持することを学ぶ。院内カンファレンスで発表する。
2年目:研修指導医の指導を受けつつ、より自律的に面接の仕方を深め、診断と治療計画策定の能力を充実させ、薬物療法の技法を向上させる。専門的な精神療法として認知行動療法と精神力動的精神療法の基本的考え方と技法を学ぶ。精神科救急に従事して対応の仕方を学ぶ。神経症性障害及び種々の依存症患者の診断・治療を経験する。院内のカンファレンスで発表し討論する。
3年目:研修指導医から自立して診療できるようにする。診断と治療計画及び薬物療法の診療能力をさらに充実させるとともに、認知行動療法、精神力動的精神療法、森田療法・内観療法のいずれかについて、指導者の下で経験する。慢性統合失調症患者等を対象とした心理社会的療法、精神科リハビリテーション・地域精神医療等を学ぶ。児童・思春期精神障害及びパーソナリティ障害の診断・治療を経験する。外部の研究会などで症例発表する。
*実際の学習時期については各研修施設群において現実的に対応することとする。