摂食障害について

< 当院での治療、療法へ戻る

摂食障害ってなんでしょう?

摂食障害は若い女性を中心に増加している病気です。この病気になると、からだとこころに様々な問題が生じて、毎日の生活に支障がみられるようになります。この病気は治る病気です。

2つのタイプに分けられます

摂食障害には、「拒食症」と「過食症」の2つのタイプに分けることができます。

【拒食症】

その名の通り、食べることを拒否してしまう病気です。体重が増えることへの強い不安や恐怖心があり、食べ物をうけつけなくなっていきます。極端なやせとなっても、やせている状態を正常と考え病気であることを認めないことが多いです。また、治療には無関心か治療への抵抗を示すことも多いです。経過中に、沢山食べたいという欲求が抑えられなくなり、一時的に沢山食べて、その後に嘔吐して体重の増加を防ぐこともあります。

【過食症】

抑えることが困難な食べたいという欲求が出現して、衝動的に沢山の食べ物を食べてしまう病気です。過食での体重増加を防ぐために、嘔吐を繰り返したり、下剤を乱用したりすることもあります。


医学的な診断基準について

拒食症、過食症ともに医師は次のような診断基準(ICD-10より抜粋)を用いています。

【拒食症の診断基準】

  • BMI[体重(kg)÷(身長(m))2]が17.5以下。
  • 体重減少は「太る食物」を避けることでなされる。また、自分で誘発した嘔吐、下剤の使用、過度の運動、食欲減退剤あるいは利尿剤の使用が1つ以上ある。
  • 太ることへの恐怖心がある。その場合、どんなに痩せていても、「自分は太っているに違いない」といった強迫的な考えがある。

【過食症の診断基準】

  • 持続的に食べることに没頭し、食べたいという欲求が自分では抑えられない。短時間に大量の食べ物を食べつくす過食エピソードがある。
  • 食べ物の太る効果に対して以下の1つ以上の方法で抵抗しようとする。すなわち、自分で誘発する嘔吐、下剤の乱用、繰り返される絶食、食欲減退剤や利尿剤の使用。
  • 肥満への病的な恐れがあり、自らに厳しい体重制限を課す。

こころとからだへの影響

【拒食症の症状】

  • 食行動の異常(拒食→過食→嘔吐→拒食)
  • やせ願望、肥満恐怖
  • 実際はやせているのが、やせているとは思わない
  • 病気とは思わない
  • やせているが体重が増えないように運動をする
  • 自分に自信がない、もしくは過度に自信がある
  • 無気力、抑うつ状態になる
  • 周囲から孤立している
  • 無月経、低体温、貧血、脱毛、うぶ毛が濃くなる、寒がり、皮膚の乾燥、むくみ、骨粗鬆症、味覚障害、聴覚過敏、けいれん

拒食症の人は、どんなにやせていても「自分は太っている」という誤った認識をしており、やせ願望や肥満恐怖は強く、自らがやせたいと望んでいるため、どんなにやせても自分が病気であるという自覚は得られにくいことが特徴です。本人はやせた状態を維持することにより、ある種の達成感・万能感を感じており、現実の悩みから解放され、一時的に自信を持てるようになります。しかし、自分の存在を肯定する理由が「やせている自分」ですから、毎日が食べ物のこと、カロリーのことで頭が一杯になり、体重が減ることが「成功」であり、逆に体重が増えることが「失敗」であるように考えるようになります。こうしてやせを維持することで様々な精神的、身体的症状がみられるようになり毎日の生活に支障がでてきます。

【過食症の症状】

  • 自制困難な食べたいという欲求がある
  • 食べだすと止められない
  • 嘔吐、下剤の乱用がある
  • 体重は標準~肥満
  • 不安、自己嫌悪、抑うつ状態がみられる
  • 虫歯、口内炎、食道裂孔、胃けいれん
  • 吐きダコ

過食症の人はコントロール不能な過食行為に対して、挫折感や後悔を抱くようになります。自己嫌悪から抑うつ的となり、引きこもりや自傷行為がみられる人もいます。過食は本人にとって嫌なことを忘れさせてくれたり、考えなくてよいストレス解決方法ですが、同時に、無力感や自己嫌悪の念を強くするものでもあります。こうして悪循環が生じ毎日の生活に支障がでてくるようになります。


原因について

摂食障害の生物学的な原因は明らかではありません。しかし、発症には心理的・社会的要因が複雑に絡み合っていると考えられています。患者さんの多くは、生まれつき繊細な性格・体質であり、ある生活環境によって、自信が持てない・傷つきやすい・過度に周囲の評価を気にするといった自己愛の強い人格が形成されていきます。そこに、ダイエット・失恋・学業不振・人間関係でのトラブルなどの心理・社会的ストレスが加わることによって異常な食行動が出現することになります。摂食障害の原因を特定することは大変困難なことであり、原因を探しても解決につながらないことが多く、かえって家族が傷つくだけで終わってしまうこともあります。原因を無理に探すのではなく、これからどうしていけばよいかを考えていきましょう。


病気という自覚

拒食症の人で自ら痩せたいと望んでいる人は、どんなに痩せてもそのことが病気だと認めることは難しいことが多いです。過食症の人は、自分が悪い・恥ずかしいといった思いから様々な問題を一人で抱え込んでしまう傾向があります。摂食障害の治療では、まず自分を苦しめているのは自分自身ではなく、病気であると認識して頂くことから始まります。そして、自分一人でこの病気と闘うのではなく、回復のためには周りの助けが必要なんだと思えるようになることも大切なことです。摂食障害になる人は、小さい頃から周囲の願望や希望をくみとって、自分の思いは抑え我慢し、周囲の願いを達成する形で生きてきていることが多いです。よく患者さんの親から「手のかからない子、良い子だった」と言われるのはこのためです。これまで自分を抑えて我慢してきたということは、それだけストレスを心の内にため込んでいるということになり、そのストレスが病気として形を変えて出現しているとも考えられます。考え方を変えると、病気の発症は「これまでの生き方はもう無理で一人では頑張れない」という意味にもとらえることができます。この自分自身へのメッセージを素直に受け取り、一人で解決するのではなく、周囲に相談することが大切です。拒食・過食・嘔吐をしている自分を責めないで、そうせざる得ない今の自分を認めてあげましょう。


回復にむけて

一般的に摂食障害の治療は時間を要することが多いです。数か月で終わることもあれば年単位を要することもあります。症状は一進一退を繰り返して徐々に良くなっていきます。回復の大切な要素として、周囲からの支え、自信を持てる活動や肯定的評価、そのままの自分を認めてくれる環境などがあり、これらを通して人は「自分らしさ」を作っていきます。回復への道は決して平坦ではありませんが、あせらず、あきらめず、ゆっくりと進みましょう。